札幌学院大学 2004年度後期
近代政治思想


シラバス


授業の狙い・到達目標

 この授業では、近代の法・政治制度を支える最も基本的な諸原理について、西洋近代の歴史的な経緯を踏まえながら、体系的に学習することを目指す。具体的には、「民主主義」「自由主義」「社会主義」という三つの代表的な思想潮流の形成・確立・変容の過程を概説する。

 同時に、現代世界において、こうした原理がいかなる矛盾と問題をはらんでいるのかを、歴史的観点から理解できるよう配慮する。とりわけ、グローバリゼーションと国民主権との乖離、現代自由主義に内在するパラドクス、という二つの論点に触れ、マルクス主義とは異なる社会主義(アソシエーショニズム)の系譜に言及することで、一定の理論的展望示したい。

 政治学によれば、世界は一つの完結した体系ではない。それは、複数の力や思想が互いに対立し拮抗しあう中で成り立っている。この授業の目的も、近代政治諸原理を体系的に理解するだけでなく、それらが現在直面している「問題」を正しく把握することにある。


到達目標

 1 公務員試験の政治思想部門に対応する知識の完全な習得
 2 教科書の内容概略の理解(福田歓一『政治学史』の理解は学部生の最高到達点)
 3 現代世界の抱える政治問題を、「思想的」に表現できるようになること


授業方法

講義形式で行う。出席票・質問票の提出を適時求め、授業にフィードバックする。


授業内容・計画

近代政治思想を三つの柱によって概説し、その延長に、現代世界の抱える諸問題を位置づける。
  ※(補)は時間が許せば触れる内容。

第1部 民主主義の系譜

  (1)ルネサンスと宗教改革
  (2)主権論の登場(マキアヴェリ、ボダン)
  (3)社会契約論1(ホッブズ、ロック)
  (4)社会契約論2(ルソー)
  (5)絶対主義から国民主権へ(ルソーとフランス革命、カント、ヘーゲル)
  (6)19世紀以降の国民主権論の変容(トクヴィル・ミルと大衆民主主義、全体主義)
  (補)現代における主権と民主主義(グローバル化と帝国論)
  
第2部 自由主義の系譜

  (1)近代立憲主義と宗教的寛容
  (2)ロックと所有的個人主義(生命・財産・セキュリティの中心化)
  (3)アダム・スミスと市場主義の成立
  (4)19世紀以降の自由主義の変容(新自由主義から福祉国家へ)
  (5)現代の問題状況(市場主義 対 福祉国家、セキュリティと統治権力の拡大)

第3部 社会主義の系譜

  (1)ドイツ観念論とフランス初期社会主義
  (2)マルクス主義の成立(初期マルクスから資本論へ、マルクスからレーニンへ)
  (3)20世紀における西欧マルクス主義とソ連社会主義(グラムシ、第三世界主義、
    スターリニズムとソ連の崩壊)
  (補)21世紀における社会主義の可能性(アソシエーショニズム、市民社会論、
    グローバル社会運動論)


成績評価方法

出席(30%)、中間試験(20%)、学期末試験(50%)の合計で評価する。試験は、公務員試験を念頭においた基礎知識の確認と、思考の論理的組み立てを問う小論文から成る。


テキスト

福田歓一『政治学史』(東京大学出版会)


参考文献

佐々木毅・鷲見誠一・杉田敦『西洋政治思想史』(北樹出版)
関連文献は、毎回の授業の中で指示する。